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R-2R DAC
SagraDAC

現代によみがえるR-2Rテクノロジー

 Eleven AUDIO SagraDACの根幹をなすDAC部は、独自の最先端ディスクリートR-2Rサイン・マグニチュード・テクノロジーをベースにしています。プログラミング可能な大型ロジック・チップですべてのデジタル処理を行い、非常に高精度な薄膜抵抗を多数使用してDA変換を行うのです。

 ほとんどすべてのデジタル録音は、いわゆるPCM(パルスコード変調)を使用して行われます。アナログ信号を一定の解像度とレートでサンプリングするのです。CDの場合は、1秒あたり44100のサンプルで、サンプルあたり16ビット、もっと新しい録音方式では、1秒あたり384000サンプルで、サンプルあたり24ビットです。16ビットのサンプルは-32768~+32767までカバーし、24ビットは-8388608~+8388607までカバーします。デジタル録音を変換して再びアナログに戻すための最適な方法は、R-2Rコンバーターを使用して、直接アナログに変換することで、これは当初、デジタル録音を再生する時に行われていました。しかし、優良なR-2Rチップは製造に高いコストがかかるので、しばらくしてデルタシグマDACテクノロジーが使われるようになりました。それは、こちらの方が優れているからではなく、低コストでありながら大量のチップ処理を使用して製造できるからなのです。これによって、マルチビットDACチップに必要とされる、コストのかかるトリミング工程を回避することができるのです。
 デルタシグマDACは、16~24ビットのサンプルを受け取って、それらを1ビットのサンプルに変換し、その後にずっと高速に2~5ビットのサンプルに変換します。この時に高レベルのノイズが生じるのですが、デルタシグマ変調器の次数を増やす(5次が典型)ことによって、そのノイズを可聴帯域よりも上の周波数帯域に移すことができます。ところが、残念なことに、そういった高度なデルタシグマDACは原理的に不安定であり、数多くの副作用が生じます(デルタシグマDACチップの製造業者のすべてが、これを低減させようと努力しています)。つまり、デルタシグマDACは、サイン波のようなシンプルな信号を送った時はどれも良好に動作するのですが、音楽のような複雑な信号を送ると、問題が生じるのです。

 今、R-2R DACが戻ってきました。これによって、サウンドがずっとナチュラルになります。プログラミング可能なデジタル・ロジック・チップのコストが下がったこと、そしてまたより低コストでありながらきわめて高精度な薄膜抵抗が入手できるようになったことの利点を生かして、さらには最先端の表面実装テクノロジーで製造した基板を使用することによって、独自のR-2Rテクノロジーを開発したのです。

 R-2Rコンバーター・チップには、基本的に2つの種類があります。ひとつは、典型的な工業用DACのような、シングルR-2Rネットワークを使用したものです。もうひとつは、サイン・マグニチュード・コンバーター(オーディオ用のDACが典型です)と呼ばれる、デュアルR-2Rネットワークを使用したものです。デジタル・オーディオ・サンプルは、0を中央にして、±の数で表されます。R-2Rネットワークは、シングル・ネットワークを使用する場合は、きわめて高精度でなければいけません。というのも、どんな非直線性も信号と相対関係にある、つまり信号レベルによって変動するからです。仕様上0.001%の歪み率のR-2Rコンバーターは、理論上は良好に見えますが、この歪み率はフル信号レベル時の数値なので、結果的には、信号レベルが下がるにつれて歪みが増加します。-60dBの信号レベルでは、歪みは1%にもなるのです。

 SagraDACが使用しているサイン・マグニチュード・テクノロジーが、デュアルR-2Rネットワークを使用することによって(ひとつを「+」信号用に、もうひとつを「-」信号用に使用します)介入するのは、まさにこの部分です。この結果、非直線性は実際の信号レベル(フル信号レベルではなく)と相対関係を持つようになります。つまり、仕様が0.01%の歪み率のサイン・マグニチュード・コンバーターは、-60dBFSでも同じく0.01%の歪み率になるのです。音楽は微細な部分が数多くあるので、きわめてダイナミックですが、それがあらゆるレベルで、ずっと良好でナチュラルな音質になるということです。

 では、もっと新しい技術であるDSD録音はどうなのでしょう? DSDは、基本的には、デルタシグマ変換の主要部分をプレーヤーから録音過程に移したものなので、デルタシグマ処理の不利な点をすべてそのまま持っています。さらに悪いのは、1ビットにロックされているということです。CDプレーヤーの1秒あたり16ビット/44100のサンプルという古いシステムでは改善が見られるかもしれませんが、高解像度の良質なPCM録音には太刀打ちできません。SagraDACはDSD録音もサポートすることにしています。一部の音源では配信されている唯一のフォーマットの場合があるからです。DSDを再生する場合は、FPGAがDSDビットストリームのローパスフィルターの役割を担います。SagraDACのFPGAは、完璧なデジタル処理でDSDからPCMへの変換を行っています。つまり、SagraDACはDSD録音の再生でもPCMと変わらずにR-2Rのメリットを最大限享受して音楽を楽しむことができるのです。  SagraDACに搭載されているのは、Soekris社製 サイン・マグニチュード27bit精度仕様の特注R-2R DACモジュールです。各デジタル信号は上図の処理を経て、216個の0.0012%超高精度抵抗による27bit精度のR-2R部を通って出力されます。シグナルプロセスが単純ではないことに驚くかもしれません。R-2Rの仕組み自体は昔から使われていた原理的なものですが、そのメリットを最大限享受するためには高精度なアップサンプリングが欠かせないのです。サイン・マグニチュード R-2R DACチップとして有名なTI(BB) PCM1704はアップサンプリング周波数として705.6kHz/768kHzをデザインリファレンスとして挙げていましたが、適正なフィルタを用いることができ、各パーツのスルーレートが十分ならば最終的なR-2R部で変換するサンプリングレートは高ければ高いほどいいのです。SagraDACが2.8MHz/3.1MHzといった往年のDACチップから更に4倍も高いサンプリングレートを達成できているのは、技術の進歩、そして各パーツの高精度化の恩恵を最大限生かしているからです。
 また、特にFIRアップサンプリングといった計算が集積する演算を行う場合、信号のビット深度と同じ精度で演算を行ってしまうと演算結果の丸めが起きてしまい、誤差が増大し、精度が極端に落ちてしまいます。演算による精度の低下を避けるために、FPGAによるSagraDACのアップサンプリング処理は67bit精度で行われます。
 R-2R部はシングルエンド構成であり、そのまま出力するアンバランスRCA出力と、バッファー回路を通したバランスXLR出力があります。

S/PDIF Blade機能


 SagraDACのS/PDIF RCA2, S/PDIF BNC入力には、S/PDIFデジタル信号の0/1認識における閾値を変えることでロックの安定並びに音質向上を図った機能、S/PDIF Blade機能が搭載されています。
 S/PDIF (Sony/Philips Digital InterFace)はSonyとPhilips共同で策定したコンシューマー向け短距離転送専用のデジタルオーディオ転送規格です。S/PDIFの転送データは、バイフェーズ符号と呼ばれる簡単な方法で、クロックとデータを合成しています。


 上記の図だけ見れば、このように簡単な合成によって作られているS/PDIF転送データには何ら問題がないように見え、単純にデジタル信号の01010101を送ればいいと考えがちです。
 しかし、本当はシンプルに考えていい問題ではありません。0と1を正しく伝送するほかに、もう一つ、0と1がどのタイミングに出るのかの問題があります。このタイミングの正確さで、伝送されるクロックの精度に影響を与えます。いわゆるジッタと呼ばれる問題です。

 現実には、完璧な矩形波の転送は不可能だといっても過言ではありません。矩形波はいったん転送されると必ず変形してしまいます。コネクタとケーブルには帯域幅制限があるため、矩形波が減衰し、非対称な台形となってしまうのです。

 このような非対称な台形の波形をベースにしてしまうと、正しいクロックを復元することができず、転送は不安定になり、復元できたとしても精度は低く、ジッタは避けられないのです。
 更に詳しく説明しましょう。
 理想的な矩形波は90度の角度で立ち上がり、同様に90度で立ち下がります。言い換えれば、精密な時間特性を持っています。一方で、台形波形では、ある判断基準が必ず必要になります。例えば、信号がある閾値VIHより大きい時にデータが1と判断し、VILより小さい時に0と判断すると仮定すると、ある矩形波が復元できます。


 しかし、VIHを違う値に設定すると、出力波形が明らかに変化します。下記のAとBの違いをご覧ください。


 AとBでは、VIHAとVIHBの基準値が違うため、結果も大きく異なります。0と1は正しいですが、出てくるタイミングが正確ではありません。このデータを使って、復元したクロックも言うまでもなく不安定であり、ジッタが発生するのです。

 VIHのほかにVILの値も変わることを考えると状況は更に複雑になり、結果として、正確のクロックを伝送することがほぼ不可能となるのです。上記の矩形波の分析は、理想的な帯域幅制限に基づいたものです。しかし、実際は更に複雑です。例えば、インピーダンスマッチング、ケーブルとコネクタの寄生容量、ノイズなどが矩形波に影響を与え、下記のようになります。


 このような波形となってしまったら、DACが立ち上がりと立ち下がりのどちらも正確に判断することができず、この波形の平均値を取るしかありません。平均値を判断基準にすると、ナイフで横から切るような形、下図となります。


 この処理が一番正確で、他に良い方法は残念ながらないのです。DACからみれば、波形の変形原因と変形度合を判別することができず、これ以上のことができないのです。更にSagraDACは、この基準値を環境に合わせて設定できるようになっており、下図のように1から9の9段階から選ぶことができます。


 ぜひこの効果を確かめてください。どの基準値が一番良いかはシステムによって違います。相性が一番良い値に設定したときには、信号認識が安定するだけではなく、音も一番よくなります。矩形波を横一文字に斬る剣士になってみてください。S/PDIF Bladeの名前の由来はこれから来ています。

 CDトランスポートとDACなど製品の組み合わせによってロックが安定しなかったり、音質が悪い時がある、それはS/PDIF送信電圧と受信電圧のマッチングが取れていない可能性があります。SagraDACはS/PDIF受信電圧の閾値を切り替えることで、あらゆるデジタルソース機器で真価を発揮できるDACなのです。

Amanero社製 特注USBインタフェース


 Amanero社の代理店でもあるEleven AUDIOは同USBインタフェースの扱いを熟知しています。SagraDACにはAmanero社にSagraDAC専用仕様として特注したUSBインタフェースが搭載されています。

特注トランス、ディスクリート電源回路


 信号を生み出す源となる電源回路にはアンプの設計概念を生かしたディスクリート仕様となっています。SagraDACの構成では全部で9系統の電源が必要になるのですが、相互の干渉を避けるために、9つ全ての系統を独立させて電源供給しています。この電源部には電源はMOS-FETとBJTの両方を採用しております。これは、それぞれに最適動作域の違い、ついては音質の違いがあり、両方の良さを生かすためです。


 SagraDACの名前は、スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア(Sagrada Família)に由来しています。Eleven AUDIOの主任設計者であるMichel Xiaoはサグラダ・ファミリアを初めて見たとき、あまりの感動に地面に座り込み、いつか同じような感動を与えられる製品を作ると心に刻んだのです。R-2R DAC SagraDACは最大級の音楽の感動を届ける製品です。

製品の仕様

入力端子並びに対応フォーマット:
USB:44.1kHz ~ 384kHz/32bit / DSD64 ~ DSD256(Native, DoP)
対応OS:Windows 7/8/10, Mac OS 10.6.8以降
USB Audio Class 2.0準拠:WindowsではASIO NativeによるDSD再生、Mac OSではDoPによるDSD再生が可能です
Windows 10用ドライバー:https://amanero.com/drivers/combo384_drivers_w10_1062.zip
Windows 7/8用ドライバー:https://amanero.com/drivers/combo384_drivers_xp_win7_win8_1057.zip
※Windows 7/8は、マイクロソフトでのサポートが終了していますので、弊社でもサポート対象外となります。
Mac OS 10.6.8以降:OS標準ドライバーで動作します

HDMI(I2S - PS Audio方式対応):32kHz ~ 384kHz/32bit / DSD64 ~ DSD256
S/PDIF RCA1 75Ohm: 32kHz ~ 192kHz/24bit アイソレータ内蔵
S/PDIF RCA2 75Ohm: 32kHz ~ 96kHz/24bit S/PDIF Blade機能搭載
S/PDIF BNC 75Ohm: 32kHz ~ 96kHz/24bit S/PDIF Blade機能搭載
Toslink: 32kHz ~ 96kHz/24bit
AES/EBU 110Ohm: 32kHz ~ 96kHz/24bit
S/PDIF RCA2、 S/PDIF BNC、TOSLINK、AES/EBUの各入力はディエンファシス処理に対応しています。

出力端子:XLR/RCA 各1系統 ※同時使用可能
出力電圧:XLR 4Vrms, RCA 1.4Vrms

THD@-1dBFS:0.008%
THD@-60dBFS:0.03%
ジッター(RMS): 0.8 pS typical
ダイナミックレンジ:130.5dB
S/N比:127dB


電源電圧:AC100V
消費電力:29W
サイズ:240 x 85x 260 mm (W/H/D)
重量:4kg(実測値)

標準的な小売価格:539,000円(税込)
JANコード:4589631461269

※受注生産
※上記仕様は製品品質向上のために予告なく変更する場合がございます。